おはようございます。各務原市、岐阜市からも近い岐南町の
皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科のぎなん皮ふ科クリニック院長 伊藤秀明です。
本日は尋常性乾癬の生物学的製剤についてお話したいと思います。
生物学的製剤とは生体が産生するタンパク質を医薬品として使用できるようにしたものです。
広い意味で言えばワクチンやインスリンなどのホルモン製剤、
血液製剤である凝固因子製剤や免疫グロブリン製剤などもこれに当たると考えられます。
免疫疾患などに対する生物学的製剤は関節リウマチに対して2003年に使用が開始されました。
関節リウマチのように、皮膚科領域だけではなく整形外科や内科の多くの疾患に現在は使用されています。
皮膚科領域でも乾癬・アトピー性皮膚炎・慢性蕁麻疹・掌蹠膿疱症・化膿性汗腺炎に使うことがあります。
これらの疾患の既存治療に抵抗性の患者様にも、高い奏効率を得られることが期待されています。
しかしながら当然副作用のチェックなどをしっかり行わなければなりませんので、乾癬に代表されるように
日本皮膚科学会ではこれらの薬剤をしっかりと副作用などにも対応した診療ができる
皮膚科専門医の施設(https://www.dermatol.or.jp/modules/spMap/)を
生物学的製剤承認施設(https://www.dermatol.or.jp/modules/biologics/index.php?content_id=4)
とし、承認施設でのみでしかこれらの薬剤の使用を開始することができないこととしています。
当院では投与前にCTなどを行う必要があることから原則、連携する大きな病院で導入していただき
当院で維持投与を行うこととしています。しかし、どうしても忙しくて平日の昼に時間が取れない患者様や
交通の足がなく大きな病院へ導入時に通院できない方には当院でも導入を行うことがあります。
今回、他院で今まで外用治療だけでフォローされており、難治で悩まれていた患者様に導入し、改善したため
「ずっと悩んできた乾癬でこんな効果のある薬がある事を同じ病気で悩む方にも是非教えてあげてください。」
と言ってくれた患者様がいらっしゃり、臨床写真をブログで掲載させていただくこととしました。
患者様は50代男性です。臨床写真は本人より掲載の許可を得て掲載しております。
投与前はこのような状態で体中に鱗屑(フケ)を伴う紅色局面(赤いぼこぼこ)を
体表面積の15%くらいに認め、PASIスコア(重症度スコア)は11.8でした。
これは乾癬の重症度が中等症以上であることを意味します。
当院と連携病院で生物学的製剤投与に際してのリスクを除外する検査をしっかり行い、投与を開始しました。
投与2週間後です。
皮疹は体表面積の5%以下となり、PASIスコアは4.6まで改善しました。
この時点でもかなりご本人さんは満足されていらっしゃいました。
次に投与6週後です。
皮疹は完全に消退し、PASIスコアも0となりました。
投与開始6週間、当院の初診を受診してたった8週間で患者様から上記のようなコメントをいただきました。
患者様から「ここに来てよかった」と言っていただけると本当にモチベーションが上がります。
全ての患者様に必ずこれと同じように効果があるわけではありませんが、重症でお悩みの患者様に
治療の一つの選択肢として提示できればと思います。
皮疹を改善させたら終了ではありません。乾癬は高脂血症や糖尿病との合併が多い疾患ですし、
心血管系の疾患を将来発症しやすい病気でもあります。しっかりとフォローさせていただき
これらを合併した際には内科の専門医の先生と連携しながら治療にあたっていきます。
開業して1年半が過ぎ、「皮膚科医は皮膚だけでなく全身も診ることができなくてはならない。」
という恩師の言葉を当時もわかっていたつもりですがしみじみ感じます。
ぎなん皮ふ科クリニックは皮膚科専門医のいるクリニックとして、皮膚疾患をよくすることはもちろん、
皮膚疾患を通じて皆様の全身疾患を予防・早期発見・早期治療できるよう努めて参ります。